【習事八箇条】花をいける楽しみをお客さまに|茶道の心を映す「花所望(はなしょもう)」

茶室に花をいけることは、季節の喜びを映す大切な所作。
今回は、亭主がその楽しみをお客さまに譲る美しい作法「花所望(はなしょもう)」について、やさしくご紹介します。

茶道における花の意味

茶道の花は、茶室の中で季節を最も端的に表現するもののひとつです。
花をいけることは、ただ飾るためではなく、亭主がその日の空気や季節の喜びを感じとり、心を整えるための大切な時間でもあります。

自然の姿をそのままに、派手すぎず、静かに咲く花こそ、茶の湯の花。
花と向き合うひとときには、穏やかな集中と、相手を思う優しさが宿ります。


「花所望(はなしょもう)」とは

「花所望」とは、茶の湯の習いの中に伝わる作法のひとつで、花をいける楽しみをお客さまに譲ることを意味します。

たとえば、由緒ある花入を用いるときや、お客さまから見事な花を頂戴したとき。
亭主は花入と花台を床の間に添え、「どうぞこの花をいけてください」とお客さまにお願いをします。

このとき、亭主は「花をいける楽しみ」をお客さまに託し、お客さまはその心に応えるように花をいけます。
花を通して交わされるのは、言葉ではなく心のやり取り。まさに、和敬清寂(わけいせいじゃく)の精神がそこに息づいています。


花所望の所作の流れ(初心者の方向け)

① 準備:花を用意する

花所望の席では、床には花入、花を盛った花台を床の下座三分の一のところに置いておきます。
水次・小刀・茶巾なども用意し、花をいけてもらう準備を整えます。


② お客さまが茶室に入る

亭主は着座したお客さまに、花所望する理由を述べ、「花を生けていただきますように」とお願いすることで花所望が始まります。


③ 花をいける

正客は相客にはかって申し合わせの上、床前にすすみます。花を見繕い、枝ぶりや長さをととのえ花入に静かにいけます。
花入れもよく拝見し、茎の長さを調えるときは、小刀で軽く整え、花の自然な姿を生かします。

  • 名物の花入れの場合:花入れを貴んで 花は少なめに
  • 花が到来の花の場合:花を賞翫して 花は多い目に

④ 花入にお水を足します

花がいけ終わると、亭主は「お水をお足しください」と挨拶。
正客は水次を取り、花入れに水を少し足し、花台を整頓し、座に戻ります。


⑤ 亭主と客、互いに拝見し礼を交わす

亭主は床前にすすみ、花をよく拝見して、礼を述べ、花台を水屋に下げます。
花をいけるという行為を通して、言葉を超えた敬意と感謝が交わされます。


花所望に込められた心

「花所望」は、亭主が自らの喜びをお客さまに譲るという、茶道ならではの美しい心のかたちです。
花をいける時間を共有することで、自然を敬う気持ちと、人を思いやる優しさが育まれます。

茶室に咲く花は、飾るためではなく、「心を伝えるため」にある——
それが、茶の湯における花の本質です。

生徒さんのお庭の秋明菊とほととぎす、リンドウ、ヒペリカムをいけた秋の茶花。床の間に季節の花を飾る茶道教室結空の茶室風景。
秋の茶花。生徒さんのお庭の秋明菊とほととぎすに、リンドウとヒペリカムを添えて。静かな茶室に季節の彩りを。

おわりに|花を通して心を伝える時間

花をいける所作の中には、「相手を思う心」「自然を敬う心」が息づいています。
亭主と客が花を通して交わす静かな交流は、現代にも変わらない癒しのひとときです。

「茶道の世界にふれてみたい」
「いちどお抹茶を点ててみたいな」
——そんなお気持ちがあれば、ぜひ体験クラスへお越しください🌸

詳しくはこちら 👉 茶道体験ご案内ページ

関連記事

  1. 茶道具の風炉と釜。三本足の形が美しく、茶室の中で静かな存在感を放つ。風炉はお湯を沸かす道具であり、安定と調和を象徴する。

    風炉と釜の三本足の意味|茶道具に宿る美と知恵

PAGE TOP